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- Works Case#009.「あえて窓を設けない。土地を読む建築家だからこそのプラン」
あえて窓を設けない。
土地を読む建築家だからこそのプラン
Works Case#009 愛知県知多郡阿久比町T様邸
住まい手のイメージをデザインする
土地は南側が道路に接する条件でした。一般的には、「南向き日当たり良好」とキャッチフレーズのつく優等生な住宅地。道路側からの南の日差しを取り入れやすい設計のしやすい土地とも言えます。しかし、建築家は住まい手の外観に対するイメージを優先し、南側に窓を設けない設計計画としました。
Facade
住まい手の要望は「正面の外観デザインに窓を設けたくない」というものでした。通常は、道路側の南側には日差しを取り込む窓を設けることが定石ですが、今回は住まい手の外観のイメージを優先した設計をしました。外観ファサードは、三角屋根で白の塗り壁を基調とし、玄関ポーチの板張りをアクセントとしたシンプルなデザイン。2階の階高を低くする工夫もされており、安定感のあるデザインとなりました。
住まい手の要望を全て叶えようというポリシーを持つ三島氏ならではの回答となった。シンボルツリーはオリーブの木を植え、玄関までのアプローチを演出しています。
Living
天井勾配に合わせて上がっていく階段が印象的なインテリア空間。南側に窓を設けていない設計だが、中に入るととても明るい室内となっている。直射日光を室内に入れず、白い壁に反射光を取り入れることなどを巧みに利用した設計となっています。インテリアは、程よく木をあしらい統一感のあるインテリアとなっています。
まるで2階がロフト空間のように感じるつながりのあるリビング空間となりました。これは、2階の階高を低くした結果によるもの。外観のファサードのバランスを整える目的で下げた階高は、室内空間のつながりを強調することにもなりました。家族のつながりを大切にする住まい手の要望に沿った設計になりました。
Atrium Space
天井勾配に合わせて階段を上っていくと、大きな窓に突き当たる。この大きな窓は、東側に設置されており朝の光をリビングまで届けてくれる。南に窓を設けなくても明るい室内空間を実現する重要な窓配置になっている。
Dining
ダイニングのそばには、将来子供のスタディコーナーとして使えるカウンターと飾り棚を設置しました。住まい手の好みを反映した素材で棚やカウンターをつくることで、住まい手が飾る小物やアイテムとの相性を考えた計画となっています。自然素材をふんだんに使用した温かみのあるインテリアデザインを目指しました。
Interior
室内が明るいと感じるのは、反対に暗いところもあるからだと考えます。明暗を巧みに計画することで、自然の明るさを一層感じることのできる空間となります。また、光は直射日光を取り入れるだけが設計手法とはなりません。夏場は直射日光を遮り、冬場はたくさん取り込むパッシブな設計が求められます。エアコンに過度に頼ることなく快適で程よい明るさの中で暮らせる家づくりを心がけています。
Void
吹き抜けの上には大きな窓が2つあります。ハイサイドからの明かりを取り込む大切な窓になっています。さらには、1階のリビングや2階の廊下へは道路や隣地からの目線を外した位置に設計されています。「外から家の中がどのように見られるか?」を考慮した設計。カーテンが無くてもプライバシーが保てる安心感のある住まい空間を目指しています。
施工へのこだわり
階高を下げる設計は、施工の仕方によっては単に天井が低く感じてしまう結果にもなります。階段の勾配と天井の勾配のバランスを見ながらの天井施工がポイントとなりました。外観は、シンプルなだけにごまかしの効かない施工ともなっています。大工職人や左官職人の技術がしっかりかみ合った施工となりました。
- 【基本情報】
- 敷地面積:218.22m2(66.01坪)
- 延床面積:116.67m2(35.29坪)
- 家族構成:大人2人 子供1人
- C値:0.4cm2 / m2
- Ua値:0.45W /(m2K)
「要望に寄り添うプランニング」
建築家/三島 史子
(Times & Design Office)
土地の南側は大通りに面している。太陽が土地に降り注ぎ、その場に立っているだけで気持ちよさを感じた三島氏。日当たりの問題は無い。ただ、住まい手から「ファサードには窓を設けたくない」という要望があった。南側に窓を設けないとすると、どのように光を取り込むかが今回の三島氏のミッションとなった。
三島氏は住まい手の要望通り、南側には窓を一つも設けないというセオリーに反する間取りを提案。その代わり、西側に太陽の位置を計算した窓を配置することで西日を遮断しつつLDKに気持ちの良い光を取り入れた。土地読むだけでなく、住まい手の要望に寄り添える三島氏だからこそ描けたプランである。
建築家プロフィール/三島史子
取材記事|当事例(Works Case#009 愛知県知多郡T様邸)の取材記事も併せてご覧ください